バターサンドと聞いてまず思い浮かぶのは、しっとりとしたクリームとサクサクのビスケット、そしてひと口食べた瞬間に広がる香りではないでしょうか。
その中心にあるのが「バター」です。
バターの質や種類によって、甘さの引き立て方や香りの余韻、全体の印象までもが大きく変わります。実際に、多くの菓子職人が「どのバターを使うか」に強いこだわりを持ち、ブランドごとの味の個性を作り上げています。
今回は、バターサンドに使われやすいバターの種類や、それぞれがもたらす味わいの違い、さらに楽しみ方までを詳しくご紹介いたします。
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目次
バターを知ればバターサンドはもっと楽しくなる

「バターサンドのバター」という視点で見ていくと、その味わいの決め手はまさにバターそのものです。無塩バターは軽やかさ、発酵バターは深み、有塩バターは甘じょっぱさ、高級バターは特別感を演出します。
それぞれの特長を知ると、自分好みのバターサンドを選べるようになるだけでなく、贈り物としての選び方にも自信を持てるようになるはずです。
そして、それよりも何よりも、バターの奥深さを知ることは、お菓子を味わう上で楽しみの幅を広げてくれるでしょう。
私たちの味覚は、舌で感じる基本五味(甘味、塩味、酸味、苦味、うま味)だけでなく、鼻で感じる「香り」や、舌触り・歯ごたえといった「食感」が組み合わさった複雑なものです。
せっかく与えられたこの最高の感覚を使って、世の中に溢れる美味しいものを味わいつくしたいですよね。
ではまず、「バター」の違いについて知り、その味わいを楽しんでみましょう。ここでお伝えする、バターの使い方についての職人の考えを知れば、味覚と知識を組み合わせて、さらに味わう楽しさを感じていただけるはずです。
計算され尽くした「無塩バター」
多くのバターサンドで使用されている「無塩バター」。
塩分が含まれていないため、加える塩の量を0.1g単位で調整でき、生地の甘み、クリームの風味、フルーツなどの副素材の香りを完璧なバランスで引き立てることができます。
焼き菓子に使うと軽やかな口あたりとなり、クリームに使えば甘さをすっきりと感じさせてくれます。
素材本来の風味を邪魔せず、果物やナッツなどの副素材とも調和しやすいため、無塩バターはバターサンドにおいて最も扱いやすいバターといえるでしょう。
深みと贅沢感を演出する「発酵バター」
特別感を演出したいときに選ばれるのが「発酵バター」です。
乳酸菌で発酵させて作られるため、ほんのりとヨーグルトのような酸味やナッツのような香りを持ち、奥行きのある味わいを楽しめます。
発酵バターを用いたバターサンドは、口に入れた瞬間から豊かな風味が広がり、余韻が長く続くのが魅力です。そのため、贈り物や特別な日のお菓子として高い評価を受けています。
甘じょっぱさが魅力「有塩バター」
お菓子にはあまり使われないと思われがちな「有塩バター」ですが、一部のバターサンドではあえて取り入れられています。
甘さの中にほどよい塩気が加わることで、味が引き締まり、味覚の輪郭が際立ち、甘さの質がより高く感じられるのです。特に濃厚なバタークリームやチョコレートを組み合わせる場合、塩味が全体のバランスを整えてくれます。
甘じょっぱい味わいは紅茶やコーヒーだけでなく、白ワインやシャンパンなどのお酒との相性も良く、大人向けの楽しみ方を広げてくれる存在です。
特別な一枚を演出する「高級バター」
バターサンドのブランドによっては、北海道産のフレッシュなバターや、フランスのAOP認証を受けた発酵バターなど、産地や製法にこだわった高級バターを使用することもあります。
こうしたバターは香りやコクが際立ち、一口で「特別なお菓子」と感じさせてくれる力を持っています。素材にこだわるお店ほど、バター選びを徹底しその魅力を最大限に活かす工夫をしています。
いかがでしょうか。バターだけでもこれほど違いがあり、バターサンドはそれを使い分けながら素材や焼き方を選び尽くしています。
いきなりさまざまなバターサンドを食べ比べてバターの違いを知るとなると、少し出費が激しくなってしまいますよね。
次は、日常生活でも手軽にできる、バターの見分け方・楽しみ方についてご紹介します。
今日から始める「バター食べ比べ」入門

バターも、ワインやコーヒー豆を選ぶように、産地や製法によって驚くほど豊かな個性があり、その違いを知ることは、いつもの食卓を何倍も楽しくしてくれます。
高価なバターや特別な道具は必要ありません。スーパーマーケットの乳製品コーナーから始められる五感を使った「バター食べ比べ」についてご紹介します。
ステップ1:バターを選ぶ
まずはバターを2〜3種類、用意しましょう。ポイントは「いつもの」と「ちょっと違う」を選ぶことです。
- 基準のバター: まずはご家庭でいつも使っている、食べ慣れたバターを用意します。これがあなたの味覚の基準点になります。
- チャレンジバター 次に、スーパーで「ちょっと違う」バターを1〜2種類選んでみましょう。
- 【種類で選ぶ】「発酵バター」: パッケージに「発酵」と書かれたものを選んでみてください。ヨーグルトのような爽やかな香りが特徴で、いつものバターとの違いが最も分かりやすい選択肢です。
- 【産地で選ぶ】北海道産のバター: いつもお使いのものがそうでない場合、国産ミルクの品質で評価の高い、北海道産のバターを試してみましょう。ミルクの風味が濃いものが多いです。
- 【脂肪分で選ぶ】「よつ葉」などの少しリッチなバター: 乳業メーカーによっては、少し価格帯が上で、乳脂肪分が高い製品があります。コクと口溶けの違いを感じることができるでしょう。
ポイント: 最初から種類を増やすと違いが分からなくなります。まずは2種類、慣れてきたら3種類と、少しずつ幅を広げていきましょう。
ステップ2:バターに最高に合うものは何かを知る
バターの繊細な風味をダイレクトに感じるには、シンプルで最高の食べ方が必要です。
- 「トースト」: 味がシンプルな食パン(香りの強いデニッシュ系などは避ける)
- 「じゃがバター」: よく洗ったじゃがいもを丸ごとラップに包み、電子レンジで柔らかくなるまで加熱します(600Wで5〜6分が目安)。熱々のうちに十字に切り込みを入れ、そこにバターを乗せましょう。じゃがいもの甘みが、バターの塩気やコクを最大限に引き立てます。
- 「温野菜」 :ブロッコリーや人参、アスパラガスなどを軽く塩茹でし、温かいうちにバターを絡めるだけ。野菜の甘みとバターの風味がどう作用し合うかを感じられます。
ステップ3:五感で味わう
味覚を鍛えていきましょう。味覚は幼児期に形成されるとも言われますが、脳とも直結しているため、鍛えれば何歳からでも身につけることができます。これからの食人生を豊かにする上でも、気軽に楽しみながら実践してみてください。
- 【見る】色を比べる:まずはバターの色に注目してください。雪のように白いものから、クリーム色、濃い黄色まで、バターによって色合いが異なります。
- 【嗅ぐ】香りの違いを感じる:パンやじゃがいもの上で溶けた瞬間の香りを深く吸い込んでみましょう。
- いつものバターは、慣れ親しんだミルクの香りでしょうか?
- 発酵バターは、少しヨーグルトのような爽やかな酸味のある香りがしませんか?
- 【味わう】舌の上で確かめる:少量ずつ、それぞれのバターを乗せたパンを口に運び、ゆっくりと味わいます。
- 口に入れた瞬間: スッキリしているか、濃厚か。
- 口溶け: すっと消えるようになめらかか、クリーミーなコクが残るか。
- 後味: あっさりしているか、ミルクの風味が長く続くか。
感じたことを言葉で表現するのも大切です。小さなお子様がいるご家庭では、こういった味覚の楽しみ方を家族と行うことで、将来大人になって、食にかかわる仕事になった時、その才能が活かせる可能性がでてきますよ。
TONOWAに使われているバターと、素材との組み合わせのこだわりについて
では、TONOWAで使用しているバターについてご紹介していきましょう。
TONOWAのクリームやサブレに使用されているのは無塩バターです。
コンパウンドやマーガリンを一切含まない「100%バター」を使用しており、添加物やトランス脂肪酸を気にされる方にも、安心・安全な商品をお届けしたいという想いが込められています。
亀井堂総本店では、素材の味を最大限に楽しんでいただくため、あえてクセが少なく、バター自身の風味が強く出過ぎない無塩バターを厳選しています。なぜなら当店のバターサンドは「素材主体設計」であり、フルーツの素材が主役です。そのため、バターは素材を支える役割を担います。クセが少なく、風味が出過ぎないものを基調とすることで、主役である素材の香りや味を際立たせています。
また、バターの融点は体温に近いため、口に入れた瞬間にスッと溶けて、後味がすっきりしています。
これがサブレやクリームにおいて「上質な口溶け」となり、多くのお客様に喜んで頂いております。
食べた際に感じていただきたいこだわり
お客様に感じていただきたいのは、バターそのものの強い主張ではなく、素材の香り、風味が前面に出る設計です。バターはあくまで「縁の下」で全体の調和を担う役割に徹しており、一般的な「バター風味主体」のバターサンドとは一線を画す点にこだわっています。
バターサンドという、素材や生地・バターの香りや味わいを同時に感じていただけるお菓子は、お口の中で何重にも重なるハーモニーが魅力です。
ぜひ、計算されつくした、職人技のその味わいをお試しください。
まとめ 味わいの違いを感じて人生を豊かにする
バターの味わいの違いを知ることは、毎日の食を豊かにする感性のトレーニングの一歩にもなります。
朝のトースト一枚を「今日はどのバターにしようか」と選ぶとき、本来備わっている感性で食を楽しめるのですから、きっと満たされた気持ちになると思います。
お菓子を選ぶ時も味わうときも、ご自身の味覚を満足させ、日々の疲れをリセットさせてくれるような味わい深い時間にしていただきたいです。作り手も、そんな瞬間を想像しながらお菓子作りを行っています。
ぜひ、ご家族で楽しみながら味わいの豊かさを楽しんでみてください。



