亀井堂総本店総本店
五代目店主 松井隆昌
この度は、亀井堂総本店のウェブサイトに足をお運びいただき、心より御礼申し上げます。
私たちは、明治六年(1873年)の創業より百五十余年、大切な方への贈り物や帰省の際のお土産、そして改まった場でのご進物として親しまれるよう、神戸元町の地で暖簾を守り続けております。
「おいしい」が溢れるこの時代に、私たちがお客様にお届けできる本質的な価値とは何か。その問いの先にたどり着いた答えは、私たちの使命が、人と人との繋がり、すなわち「世の縁(えにし)をあたためる」ことにあるという確信でした。
暮らしが便利になる一方で、人と人との心の距離が少しだけ遠くなってしまったように感じる現代だからこそ、誰かを想う真心をお菓子に託す、その尊い瞬間を何よりも大切にしたい。一つのお菓子が、大切な方との語らいのきっかけとなり、記憶に残る福々しい時間を彩る。そのお手伝いを通じて、世の中にあたたかな縁を紡いでいくことこそ、私たちの最大の喜びです。
原点を守りながら、新しい挑戦を続ける
初代・松井佐助が、文明開化の気風に満ちた神戸の地で、当時まだ珍しかった卵や砂糖といった洋菓子の材料と、伝統的な和菓子の手焼きの技術を融合させて「瓦せんべい」を生み出しました。その製法は今も変わらず、職人が一枚一枚、心を込めて焼き上げています。
幼い頃から工房で嗅いできた、あの甘く香ばしい香りを原風景としながら、私たちは今、初代の開拓者精神を受け継ぎ、これからの百年までに根付く文化をどのように生み出すか、日々研鑽を重ねています。 伝統とは、単に古いものを守ることではなく、受け継いだ志を深く根付かせながら、時代の声に耳を澄まし、変化を恐れずに挑戦を続けること。そのしなやかな姿勢こそが、亀井堂総本店の変わらぬ信条です。
「この街に亀井堂総本店があって良かった」と地元の皆様に誇りに思っていただき、「神戸を訪れるならあの店へ」と国内外からお越しの方々の旅の目的となる。そんな存在を目指し、神戸らしい「暮らしを愛するセンス」に寄り添い、私どもの原点である元祖瓦せんべいを大切に守り育てるとともに、日々の暮らしや季節の移ろいに彩りを添える、新しいお菓子づくりにも挑戦してまいります。
「大切な家族に心から食べさせたい」と思えるものを
そして、いつの時代も店の暖簾を支えるのは「人」です。菓子をつくる人から、お客様に商品を手渡す人も、誰もが誇りと愛着を持って働ける。そんな温かい血の通った商いを通して人と人の縁を紡ぐことをお約束します。まずは私たち自身が「大切な家族に心から食べさせたい」と思えるものだけを実直につくり、互いを尊重し合える風土を育んでいく所存です。
これからも「世の縁をあたためる」という使命を胸に、時代に寄り添うお菓子づくりに精励してまいります。皆様の暮らしのそばに、私たちのつくるお菓子がありますことを心より願い、ご挨拶とさせていただきます。
今後とも末永いご愛顧を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。